ビッグコミックスピリッツ / 通常連載

この世は戦う価値がある

『この世は戦う価値がある』は、ビッグコミックスピリッツの通常連載作品として記録されている漫画です。出版社は小学館。作者(作画)はこだまはつみ 隔週連載。連載期間は2023年4月17日 - 2025年10月31日。

あらすじ・ネタバレ

会社員として働く伊東紀理は、職場での過剰な要求や人間関係、将来への不安を抱えながら、自分の人生を自分で選べないような感覚に陥っていた。毎日をやり過ごすうちに、彼女は周囲の期待に合わせることを優先し、自分が本当に何を望んでいるのか分からなくなっていく。そんな紀理の前に、死後には必ず誰かの役に立つことを約束する一枚の証明が示される。それは、死ぬことを選べる権利と引き換えに、残された時間を自分の意思で使うための制度だった。紀理は、自分の人生を終わらせるかどうかを決めるために、仕事を辞め、住む場所を変え、人との関係を整理しながら、これまで見ないふりをしてきた感情に向き合う。自由を得たはずなのに、何をしてもよい状況ではかえって迷いが増す。家族や友人、社会から受けた傷を抱えたまま、紀理は世界の中に自分が生きる理由を探していく。生きることを無条件に美化せず、それでもこの世に残る価値を自分で見つけようとする人生再起の物語である。

豆知識・雑学・よくある質問

本作の大きな仕掛けは、死後に必ず誰かの役に立つことを約束する一枚の証明が、主人公に「自由に生きる権利」を与える点にある。一般的な社会では、死ぬことを考える人に対して生きるよう説得するが、紀理は生きるかどうかを自分で選べる条件を得たことで、初めて自分の人生を見つめ始める。作品は現代社会で誰もが抱えうる、会社や家族への従属感、自己否定、過労、人間関係の疲れを出発点にしている。タイトルは、この世に価値が最初から備わっているという断言ではなく、戦ってでも価値を見つける必要があるという問いかけとして読める。よくある質問として、死後に役立つ証明は現実の制度なのかという点があるが、物語上の架空の仕組みであり、主人公が自由を考えるための装置である。生きることを強制するのではなく、選択肢を与えることで生への執着を取り戻させる逆説的な設定が特徴だ。

読者の感想・考察まとめ

紀理が抱える問題は、極端な一人の不幸ではなく、周囲からは「普通」に見える生活の中で、自分の感覚を少しずつ失っていくことだ。仕事を辞めれば自由になるように見えても、長年身についた罪悪感や他人の期待は簡単に消えない。死を選べるという設定は、人生を軽く扱うためではなく、死を意識しなければ見えなかった欲望や怒りを可視化する。何か大きな使命を与えられなくても、食事をする、誰かと話す、知らない場所へ行くといった小さな行為が、生きる側へ戻る足場になる。社会に適応できない人を努力不足と決めつけず、まず環境から離れて考える時間を認める点に、本作の現代性がある。タイトルの「戦う」は、敵を倒すことではなく、他人に決められた価値観や、自分を諦めさせる内面と対峙することだろう。生きる理由は外から与えられるものではなく、自分の選択と経験を通じて後から形になるという考えが、物語を支えている。

読み方・略称・英題

このよはたたかうかちがある

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